今日は舌(した)のお話です。
舌診(ぜつしん)について説明いたします。
漢字のとおり舌をみて人の症状を判断するというものです。えっ!舌で判断?とおもいますよね。それが、少しは治療の目安になるのです。
舌診は中医学、漢方の望診(ぼうしん)で最も重要な診断方法です。舌は本体である舌質とその上にはえている苔のようなもの、すなわち舌苔に分けて観察する。舌質を観察することで、臓気の虚実を識別することができ、舌苔を見ることで胃気の清濁と外邪の性質を識別することがでます。簡単にいえば、舌質と舌苔を観察することで、病気の性質、正気と邪気の消長の状態を知ることができるのです。が、さすがに今現在すべての症状を舌でわかれというのは無理です。しかし、ある程度のおおよそのことは舌でも判断できることもあります。
●舌と臓腑の関係は
舌と臓腑の関係が深く、舌尖は心に属し、舌根は腎に属し、中心は肺胃に属し、両辺は肝胆に属しています。三焦でいうと、晋は上焦、舌中は中焦、舌根は下焦に属する。
●正常な舌質と舌苔の状態は
一般に舌質は紅潤で舌面に薄く白苔がおおい、乾きすぎずしめりすぎないこと。ただし正常人の舌質や舌苔でも体質や嗜好物などによって、これと同じということはいえません。多痰、多湿の人は舌苔が比較的厚く、陰虚内熱の場合は舌苔が少なく黄色みを帯びています。酒を好み、たばこを吸う人は舌苔が灰色を帯びたり、比較的黄色でねばりがあったりしているようです。乳児の場合は白くなめらかである。なお先天的な舌光無苔、あるいは舌苔がまだらにはがれていたり、舌に裂紋の多い方もいます。
●舌質について
色についていえば、白(淡)、紅、深紅色(えび茶)、紫、藍の五色に分けらます。
白色 舌質が淡白なのは虚寒証、または大出血後の極度の貧血現象です。
紅色 舌端の紅色は上焦の熱が盛んな場合、あるいは心火上炎のときです。舌辺の紅色は肝熱です。舌質の鮮紅色は温熱証で陰虚火旺です。また深紅色は多くの場合、邪熱が営にはいったためであると考えられています。
紫色 三焦全体の熱極である。紫暗色は瘀血の蓄積である。淡紫色に青色を帯び、湿潤しているのは、寒蛇が肝腎にはいった陰症です。
藍色 なめらかなのは陰虚症で、乾いているのは瘀熱証で、ともに病気が重症であることを示しています。
●舌苔について
白苔 白くねばりがあってなめらかなのは内に痰湿があり、白で厚くねばりけがあるのは湿濁が盛んな場合です。粉末をはたいたようなのは湿疫の穢濁が強いときです。白苔は外感病の場合多くは表証ということです。
黄苔 淡黄で乾いていない場合は、邪が裏へ伝わりかけているとき。黄色で粘り気があるのは湿熱である。黄で垢がへばりついているようなのは、湿が熱よりさかんであり、濃い黄で裂紋がある場合は熱が湿よりさかんなのです。
灰黒苔 灰色で黒く粘滞潤滑しているのは停飲、あるいは直中(病邪が陽経からはいらず、いきなり陰経にはいる)の陰寒です。黒苔が乾燥しているのは熱が盛んで律をそこない、火が極まって水を克した場合です。
●染舌について
食物によっても舌苔はよく変化します。牛乳や豆乳を飲むと舌苔は白く粘滞した状態になります。また柑橘系を多く食べると淡黄色に変化し、製菓やみそ漬けなどの野菜をとると多くの場合、灰黒色になる。この種の変化は舌苔の上に浮いていて、舌質や舌苔とは関係はないようです。
●舌質と舌苔の形態の変化など
舌が堅くしまっていて黒みがあり古いのは実に属し、軟らかくしまっておらず、若々しいのは虚に属します。かわいているのは律の枯渇、潤は律の正常をあらわします。軟らかいのは気と液が潤っている事であり、硬いのは脈絡が栄養されていない証拠です。舌を口外に出すときふるえるのは虚と風に属することになります。なえて軟らかく運動不能の状態は正気の虚弱に属する苔が薄いのは表邪の初期であり、厚いのは邪がすでに裏へはいったことをあらわします。
舌苔に根がないものは、表に濁気が集まって病気は浅く、根がある場合は病気は重いときです。光沢があるものは、病が好転するし、光彩のないものは悪化する。腫れ上がった状態のものは水湿に属し、やせたものは心虚か内熱の亢進したものです。
苔のないもの光舌といって、多くの場合陰虚ですが、とくに肺、腎の陰液が極度に欠損していると異様な光沢があらわます。舌の中央で一か所舌苔がはがれたものを剝苔といって陰虚有熱といいます。温疫の湿熱が陰を傷つけるといたるとこがはがれてきます。光舌に波紋のある場合、または舌苔の燥裂とはともに律液の損傷が考えられます。
舌に紅刺(とげ)か紅店があるのは内熱がきわめて重いときで、舌に白点ができ、飲食をすると刺すような痛みのあるのは胃熱によって、かびのようなものが舌や口内にひろがっていくのは糜といって、熱が滞って陰が傷れてきた証拠です。
舌質と舌苔の変化を統合すると、舌質と舌苔の変化を別々に観察したあと必ず両方を結びつけ考えなければなりません。舌ひとつでもなかなか興味ぶかいものですね。
みなさんも日々の体調や治療の前後の舌の状態を比べてみてはいかがでしょうか。